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■ ECUのROMチューニングについて
●コンピュータチューン(ROMチューン)は難しいイメージがありますが、決して難しいものではありません。
現状で不都合な部分を目的にあわせて書き換えることがコンピュータチューンで、すべて1から作るわけではありません。 基本的には、キャブセッティングと同様です。 例えば、ターボのブーストを上げたら燃料が足りない、そんな時は燃料を増量します。その増量の方法もROMの中にある燃料マップの数値を増やす事だけで実現できます。 外部要因に左右されたり、多くの専用工具が必要なキャブセッティングに比べ簡単です。
いろいろな車種のコンピュータがありますが、基本的に同じです。
●ノーマルのコンピュータは、パワーや燃費、壊れにくさをバランスして作られています。そのコンピュータを、パワー重視、燃費重視などに調整したり、パーツの仕様に合わせることができます。
●コンピュータは、動作手順を書き込んだROMを内蔵しています。 CPUからROMの部分を分離して書き換えを可能にする「追加基板」などを使用すれば、多くの車種でチューニングができます。
●コンピュータチューンは何でもできると思われがちですが、実際には燃料、点火の制御とリミッターの制御、一部の車種はブースト圧などの制御ができるだけです。ですから、キャブレターなどが形を変えただけで、基本的な仕組みは何ら変わりません。 実際の数値分の燃料を噴射するコンピュータは、目で見ながら確認することができないキャブセッティングに比べ簡単です。
●ROMは通常、負荷と回転数によるマップに、燃料噴射量の数値が記入されています。 メーカーによって、縦軸が回転、横軸が負荷であったり、逆の場合もありますが、各メーカそれぞれ特色があり、迷うことはまずありません。また、数値の並び方からもすぐ理解できます。 「負荷の高い部分は、燃料も濃い=数値が大きい」など
●マップの大きさは、縦16列、横16列が一般的ですが、横が15だったり、縦が20だったりと言うこともありますが、これも数値の並び方を見れば一目瞭然です。 アクセル全開の4000回転で燃料が薄いとすれば、マップの「負荷が全開部分、回転が4000回転付近」の数値を少し増やします。数値の増やし具合は、どなたでもすぐ体得できます。
●アクセスモニターを使用すれば、実際に読んでいる場所が表示されますから、書き換える場所を間違えることもありませんし、ビデオカメラでタコメータなどと同時に録画すれば、データロガーの簡易版として機能します。
ROMとは ●ROMは、たくさん並んだ「引き出し」を想像して下さい。普通のROMは、横が16列で、高さがROMの容量(ROMに書いてある数値で64や128、256や512等)によって変わります。 64は512段、128は1024段、256は2048段、512は4096段の高さになっています。 何番目の引き出し?は、アドレス=〜番地と言います。
64は 0000〜1FFF 128は 0000〜3FFF 256は 0000〜7FFF 512は 0000〜FFFF 番地までの容量を持っています。
0123456789ABCDEF で2段目になって10,11,12・・・1E,1F,20・・・FF,100・・・1FFFまでが64のROM・・・3FFFまでが128のROMです。
「横が16列の引き出し」ですから、そのまま10進数で表すと16が2段目となり、わかりにくいので16進数を使います。
●それぞれの「引き出し」の中は、10進で言うと、0から255(16進数で0からFFまでの二桁)の数字だけが入っています。この数字をデータと呼びます。 コンピュータ(CPU)はROMに、何番目の箱の中身はなに?と聞くとROMは引き出しの中に入っている数字を答えます。 ROMの仕事はこれだけです。
●ここで出てくる ABCDEF などは16進数です。普通は10進数ですから9の次が10です。つまり10で一桁、繰り上がるわけです。 16進数は、16で繰り上がります。 10進数の16は、16進では10になるわけです。 123456789の次に10、11・・・、15の次が10では難しいですね。 ですから16進数では、123456789ABCDEF、1011 12 13 14 15 16 17 18 191A 1B 1C 1D 1E 1F、20・・・と言った具合になります。つまり10進数の10とは16進数では「A」となります。
●では「5A」と言う16進数があったとします。これはリミッターなどで良く聞きますね。これは10進数ではいくつでしょうか??? 5*16(進)=80ですね その80+A(Aは10ですね)=90 つまり90です。それを2倍すると・・・。 めんどくさい・・・とお考えなら 「WINDOWS」には「アクセサリ」に「電卓」 が付いてます。「電卓の種類」で「関数電卓」を選び、16進で5Aと入れて10進を押すと、あら便利、90って一発です。
ほんとにリミッター???って思ったら、その数値を下げてみれば、すぐ解ります。
●しかしROMチューンでは、10進と16進を意識することは、ほとんどありません。ノーマルに対して増やす、減らす事がほとんどですから「1Aに3を加えたら1Dになる」位を理解すればで十分です。
●ROM書き換えとは、あるアドレス(引き出し)のデータ(数字)を入れ替える事だけなのです。 ただ、普通の窓付きROMは1カ所だけ書き換えたり、上書きすることができないので(厳密に言えば、できないこともないのですが、一応できないと思ってください)、紫外線を当てて一回全部消さなければなりません。
●内容を消去するためにROMイレーサがあります。 また、窓のない物は消せなかったり特殊な操作で消せたりといろいろあり、その種類は何百とあります。
●足の数など、見た目は同じでも、型番によって全く違いますので、もともと付いているROMと同等の型番を使用します。
●ROMチューナは、上書きできる特殊なROMを使用しているため、ROMイレーサの必要がありません。
●ROMを読み書きするROMライタが、車についているROMに対応していないと、書き換えることができないので注意が必要です。ROMチューンしにくい(できない)車種は、純正のROMを「読み書きできるROMライタが無い」場合がほとんどです。
●一般的なROMの製造メーカーはいろいろありますが、気にする必要はありません。耐熱性等有りますが、現在では純正でも標準品を使用していますから標準品の性能で問題ありません。
●ROMの型番例として27C256−12は27が窓付のROM(E−P型ROMで、紫外線で消せる)を表し、Cが構造(消費電力が少ない)で256が容量となります。−12は応答速度を表しています。コンピュータ(CPU)はROMに対して答えを待つようにできていますから、応答速度も15(150ns)程度以下であれば特に気にすることもないでしょう。
●ROMチューナは512のデータを2つ内蔵できるように(ノーマルとチューン)、512の倍、容量1MのエミュレーションROMを使用しています。スピードは120ns相当です。また、コピーモードを持っているので、ROMライタも必要ありません。さらに、変換基板を使用すれば、エミュレーションROMが通常のROMと同様に使用できます。
●ROMを2個使っているコンピュータ(一度にROM2個を読む)は16ビットとなります。(8ビットのROMが2つ並ぶから8+8で16ビット)これはコンピュータにとってROM1個では一度に読み出すデータが0−255までの数では足りない場合に使用されています。一度に2個のROMを読むため、0−65535(0−FFFF)までを読み込みます。しかし、チューニングの際にはこれらを意識する必要はありません。
●追加基板によって、同じデータ2個と偶数、奇数書き分けタイプで、多少変わります。 同じデータ2個は、追加基板で1個めのROMは偶数、2個めのROMは奇数番地と振り分けています。 この場合、そのままROMチューナで使用できます。 偶数奇数書き分けタイプは、ODEV−PCBを使用することにより、スプリットタイプの基板でも使用できます。
ROMの取り外し ●チューンを始める第一段階は、ノーマルのチップの取り外しからです。通常の28本足のROM等の場合でも、ハンダ吸い取り器が必要です。多少高価でも、電動ポンプで吸引できるものの方が手動で吸い取るものより、仕上がり、安全性などで優れています。どうしても手動を使う場合は、コテと一体型の物でないと、必ず(と言って良いくらい)失敗します。当社で扱っている吸い取り器も、一体型の手動式になります。 PLCCパッケージ(真四角でピンが裏側に回り込んでいるLSI)などのワンチップCPU等は、ブロアータイプの物でないと、まず不可能です。 PLCCパッケージ
LCCパッケージの場合は、専用のソケットを必要とします。 LCCパッケージ
●取りはずしたROMが、ROMライターで読み込めるものは、ノーマルデータを読み込みます。読み込めないタイプの場合は、ノーマルのデータが必要になります。この場合、ノーマルデータは読み込みアダプターなどを使うか、購入する必要があります。
ROM内部は、コンピューターを動かす為のプログラム領域と動作時に参照するデータ領域があります。通常は、データ領域を変更します。データを見て、不規則な並びの部分がプログラム領域、ほぼ規則的な部分が、データ領域と判断できます。それを判断するには、ROMメーカー等のように、データに色付けできる、表示ソフトが必要になります。
燃料の制御
●例えば、E100番地を指定します。 このときアイドリング状態では、E111番地付近(上下左右1段以内ぐらい)のデータC3 を読んでおり、その場所にあるデータが、基本燃料噴射量に対する補正値になります。そして、アクセルを踏み込むと右方向のデータを読み込み、回転が上がるに従って下方向の データを読み込みます(メーカー、車種によって違います)
●つまり燃調マップとは、基本の噴射量に対して負荷、回転に対応した燃料の噴射量が書いてある地図、と言えます。 多くの場合、アクセルを踏み込むと燃調マップの1番右か2番目あたりを読み込みます。場合によっては、右を飛び越して一番左のライン を読む場合もあります。 回転は、400回転や500回転刻み等になっています。 ●燃料マップの一番下のラインは、一般的に6500〜8000回転です。高回転型のエンジンは、高回転までマップが組まれています。 車種にもよりますが、マップ読み込み時には4つのデータを1セットとして読み込み、平均を取っているようです。 したがって多少の数値の増減は現れにくいですから、全体の流れを中心に考えて下さい。 ●マップの読み込んでいるところを確認するためには、走行中のデータを読んでいる位置を確認するアクセスモニタが必要になります。 そのような機器がない場合、マップの読み込んでいると思われる部分に異常に大きなデータを書き込みます。そして走行することにより、 異常になった場所がマップの読みこんでいる場所、といった探し方もあります。 これは、各種リミッターのデータ番地を探す場合にも有効です。 ●エアクリーナやマフラーを変えたならば、燃料が足りなくなるわけで、増量も必要になります。
学習機能 ●読み込んでいる場所の数値を増やせば燃料が増量され、数値を減らせば燃料が減量されます。 しかし、O2センサーフィードバック制御(学習機能)の為に、データを変更しても一時的にはセッティングが変わりますが、時間がたつと元に戻ってしまうことがあります。 ●マップを見ると左半分の上の部分の数値が非常に大きくなっていますが、この部分がフィードバック制御の領域といわれています。 この部分の燃料を削ると一時的には燃料が薄くなりますが、学習機能により戻ってしまいます。 基本となる領域が減量された為、その他の領域は逆に濃くなってしまう事もあります。 燃調には、いろいろな方法がありますが、フィードバッグに左右されない燃調をとるには、フィードバック領域以外を増減させることもひとつの方法です。
書き換え時の注意 ROMは、動作手順が書き込まれたプログラム領域と、参照するデータ領域に分かれています。 燃調や点火マップ、リミッター類はプログラム領域が参照するデータ領域になります。手順(プログラム領域)を変更してしまうと、エンジン停止や予期せぬ状況になる可能性がありますので、データ領域のみを書き換えるようにして下さい。エンジン回転中の書き換えは必ずアイドリングで、エンジンが停止しても支障のない状況でおこなって下さい。
マップの組み方 ●コンピューターは、ノーマルマフラー、ノーマルエアクリーナー、ノーマルブーストに対してセッティングされており、どんな使い方をしても壊れないようなマージンも持っています。しかし、それらのパーツを交換し、ノーマルのマージン分で足りない時に、燃料の増量が必要になります。つまり、パーツを交換して吸入空気量が増えた分を増量するわけです。また、マージン分を削ることによりパワーアップも可能です。 ●マップ上の数値に対する増量の割合も、車種によりまちまちですし、一定以上増やしても、インジェクターの容量以上の噴射はできません。 以上のことを計算に入れて、数値の増減をします。 一般的に燃料は、薄いとパワーが上がり、濃いとトルクがでるとも言われていますが、一概にはいえません。 増量分は、車種によって違いますが、10(16進)増やすと約20%ほど増量される車種が多いようです。
●日産車の場合、縦16横16の表で表すことができます。他のメーカーの場合、縦16横16とは限りません。 最後に載っている、マップ一覧を参考にしてください。 マップを作成するにはます、升目を作りROMチューナでデータを表示させて記入します。 点火時期は、7C00hからと7400hの2面があり、条件により切り替わる場合があります。 ●条件は車種によって違いますが、ハイオクとレギュラーによるものや V−TECなどでカムが切り替わるときなどが考えられます。 簡単な変更方法は、何面かの点火マップを同じ比率ですべて書き換えてしまうことです。 点火マップは燃調マップ同様、横が負荷、縦が回転になっています。高負荷ほど右側を読み、高回転ほど下側を読みます。 (メーカー、車種によって違います) ●点火時期は、16進数をそのまま10進数に置き換えた数値になっているものや、マツダ車のように数値3で1度という車種もあります。
●点火時期は、ノーマルでもっているマージン分を進角させる事や、燃料を増量した分を進角させる事ができます。 1度進角で1馬力以上パワーが上がるというチューナーもいるように、可能な限りの進角すると良い結果がでます。 しかし、進角させすぎると、ノッキング(早く火花が飛ぶために、異常燃焼)をおこしますので高負荷域では、ターボ車4度位、NA7度以内程度におさえた方が、安全性は高くなります。 また、大幅なブーストアップ等をした場合は、ノッキングをおこす領域を遅角させる等して安全性を高めることもできます。
●一般的に、点火時期は、進角させるとパワーが上がり、遅角させるとトルクが上がるといわれますが、これも一概にはいえません。 低回転域を進角させると低速トルクが少なくなる場合があります。 SRエンジンの場合、高回転域の点火時期がノーマルでかなり進角されています。ですから、高回転域を進角させると燃料を追加してもノッキングが発生します。車種によっては遅角も必要になる、と言うことを考慮して、セッティングして下さい。 燃調、点火時期調整以外に、回転軸や負荷軸の拡大や、大容量インジェクターをいれた場合の基本噴射量の補正値、無効噴射、冷間増量等多くのセッティング要素がありますが、基本は燃調、点火マップです。
各種リミッター及び制御 ●各種リミッターをカットする場合、大きく分けて2種類の方法があります。 一つは、リミッターを効かせるためのプログラム領域そのものを変更する場合、もう一つはプログラムが指定する数値(180K)等のデータを変更する場合です。 一般的に、変更が簡単な為、後記の方法が多く使われています。 日産車などでは、スピードリミッターのよく知られているデータに、5A(16進)が使われています。 これは、10進に変換すると5A=90となり、2倍すると180で180キロでリミッターがかかるわけです。車種によっては、64= 200キロでもリミッターの入るものもあります。(2段目のリミッター)
●ブーストリミッターには、エアフローなどからの吸入空気量と、回転数との演算でリミッターをかけるため、明確なブーストリミット圧指定はしにくいですが、回転数に対応したラインではいる場合が多いので、ラインの数値をすべて上げる事が必要です。 各種制御も、当然コンピューターの制御範囲にあるものに限られますが、いろいろな変更は可能です。
内容に、間違え、不備な点がありましたら、ご容赦ください。
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